女性の健康と慢性疾患に対するライフコースアプローチ
女性の健康に対するライフコースアプローチは、女性にとって重要なあらゆる健康問題の研究、なかでも特に慢性疾患と生物学的機能に着目した研究と考えられています。これまで、女性の健康問題をリプロダクティブ・ヘルスや妊産婦の健康問題に限定することがよくありましたが、このアプローチの研究はそのような前提に立った研究ではありません。むしろ重要なのは、女性の人生において、初経から閉経、そしてそれ以降での生殖に関する事象や特徴が、後半生の慢性疾患発症の基となる生殖軸の形成に大きく関わっているということです。例として、エストロゲンの曝露は、初経、出産と授乳、外因性ホルモンの摂取(経口避妊薬や閉経後ホルモン療法)、閉経の要因やタイミングなどによって生涯を通じて変動していることなどがあげられます。[1]
女性の健康、初潮、閉経
慢性疾患、心血管系疾患、メンタルヘルス、認知症、骨粗しょう症
井手野 由季 | 准教授 [兼任] |
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長井 万恵 | 准教授 [兼任] |
Hsin-Fang Chung | 協力研究員 |
女性の慢性疾患におけるライフコースアプローチ:慢性疾患の既知のリスク要因(社会人口学的要因、体重、保健行動など)に加えて、最近の研究では、女性の慢性疾患のリスクに生殖機能関連要因が付加的役割を果たしているという新たなエビデンスが示されています。私たちは、リスク要因やその発生のタイミングと期間とこれらが共有する慢性疾患のリスク増加との関係を定量化するための体系的な調査アプローチを用いて、統合的にアプローチすることを目指しています。– 図 1.
図1. リプロダクティブ・ヘルスと慢性疾患に対するライフコースアプローチの概念的枠組み(Mishra 他 に基づく)[2,3]
私たちは、女性の慢性疾患に対する体系的なライフコースアプローチを可能にする大規模で詳細かつ、長期間にわたるデータセットを活用し、リスク要因の組み合わせや、それらの発生のタイミングと期間が慢性疾患のリスクに与える影響を特定するための研究を展開しています。特に、日本とオーストラリアに在住する女性の健康とウェル・ビーイングに焦点を当て、比較を進める予定です。
私たちの研究目標を達成するために、以下のデータを活用します。
・The Japan Nurses’ Health Study(日本ナースヘルス研究)
・Australian Longitudinal Study on Women’s Health
・International collaboration for a Life course Approach to reproductive health and Chronic disease Events (InterLACE):13か国で行われた27の研究から得られた85万人以上の女性の個別データからなる、女性の健康に関する先進的な国際共同研究プロジェクト。