群馬大学(群馬県前橋市)とクイーンズランド大学(オーストラリア)は、女性の健康のための体系的なライフコースアプローチ研究を加速するために、クイーンズランド大学に海外ラボラトリーを設置(2023年10月)し、国際的な共同研究を進めてきました。※1
今回、その共同研究の成果が、糖尿病に関する国際的トップジャーナルである「Diabetes Care」に掲載されることとなりました。
概要
白人と比較して、アジア人と黒人では生活習慣病である2型糖尿病のリスクが高いと言われてきました。今回、群馬大学未来先端研究機構の海外ラボラトリーの研究グループは、女性の一生涯の健康を考える、ライフコースアプローチ研究を目的とした国際的なコホート研究プロジェクト「インターレース(InterLACE)」 のデータを用いて、日本人のほか白人、中国人、南アジア/東南アジア人、黒人、複数の人種・民族的背景を持つ人の6グループでの2型糖尿病発症リスクとさらに肥満度(BMI)との関係を検討し、人種・民族間での違いを定量的に明らかにしました。
◆ 70歳時点における2型糖尿病の累積有病割合では、日本人は約18%であり、南/東南アジア人や黒人の約25%の有病割合より低かったものの、中国人での12%や白人での7%といった有病割合より高かった。
◆ BMIなどの条件を同じにしても、日本人女性では白人女性と比較して2型糖尿病発症リスクが約2倍程度高かった。これらの傾向は黒人、中国人、複数の人種・民族的背景を持つ人においても同様で、特に南アジア/東南アジアの女性においては、白人と比較して2型糖尿病の発症リスクが4倍を超えていた。
◆ BMIが18.5から23.0 kg/m²未満の白人女性と比較して、日本人女性では、アジア人基準での過体重とされるBMIの女性(BMIが23.0から25.0kg/m2未満、25.0から27.5kg/m2未満)においてはそれぞれ約4倍、約6倍、肥満とされるBMIの女性(BMIが27.5から30kg/m2 未満、30kg/m2以上)ではそれぞれ約9倍、約20倍と、BMIが高くなるにつれ、糖尿病のリスクが高くなっていた。
◆ さらに、南アジア/東南アジア女性においては過体重とされるBMIの女性では約9~13倍、肥満とされるBMIの女性では約23~35倍と、BMIが18.5から23.0 kg/m²未満 の白人女性と比較して、糖尿病のリスクが他の人種・民族の中で最も高かった。
この知見は、2型糖尿病の予防や早期発見のための健康指導等において有用となるものです。
記者会見の様子は、本学ホームページ(記者会見)をご参照ください。
■論文情報
論文名:The Association Between Race/Ethnicity and Risk of Type 2 Diabetes in Women Varies by BMI: A Pooled Analysis of Individual Data From 15 Cohort Studies
雑誌名: Diabetes Care
DOI: 10.2337/dc25-1478
公開日: 2025年12月3日(水)午前10時(日本時間)(米国中部標準時12月2日(火)午後7時)
【補足説明】
※1 コホート研究とは、仮説として考えられる要因を持つ集団(曝露群)と持たない集団(非曝露群)を追跡し、両群の疾病の罹患率または死亡率を比較する方法であり、どのような要因を持つ者が、どのような疾病に罹患しやすいかを究明し、かつ因果関係の推定を行う研究です。
群馬大学では、日本で活躍する女性の健康を支援するための研究として、2001年に日本で初となる就労女性を対象とする大規模コホート研究「日本ナースヘルス研究(JNHS)」を開始し、全国の30歳以上の女性看護職、約5万人の参加を得て、内、1万5千人以上の方に長期フォローアップ調査にもご参加頂き、現在もこれを拡大しながら継続しています。
また、オーストラリア・クイーンズランド大学のGita MISHRA教授は、女性のライフコースに沿った健康研究を目的とした国際的なコホート研究プロジェクト「インターレース(InterLACE)」において中心的役割を果たしています。
群馬大学未来先端研究機構では、これら「日本ナースヘルス研究(JNHS)」と「インターレース(InterLACE)」を活用し、女性の健康のための体系的なライフコースアプローチ研究を加速するために、2023年10月にクイーンズランド大学に海外ラボラトリーを設置し、クイーンズランド大学のGita MISHRA特別招聘教授、Hsin-Fang Chung協力研究員、群馬大学の林邦彦特別教授、長井万恵准教授、井手野由季准教授、伊藤歩美助教の研究チームにより研究を推進しています。
【本件に関するお問合せ先】
群馬大学食健康科学研究センター(兼)未来先端研究機構 准教授 長井万恵
E-MAIL:kazue-nagai [at] gunma-u.ac.jp
【取材に関するお問合せ先】
群馬大学研究推進部研究推進課未来先端研究支援係
E-MAIL:kk-kensui4 [at] ml.gunma-u.ac.jp(係共通)
(#を@に置き換えてください)
■関連リンク
The University of Queensland School of Public Health
群馬大学未来先端研究機構
群馬大学食健康科学教育研究センター
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