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二村研究室

遺伝子発現制御機構の解明と、その成果を基にした

がんの新規治療法・診断法開発

複数因子の複雑な相互作用による遺伝子発現の仕組みを明らかにし、その成果を基に、がんに対する新しい治療法・評価法の開発を行っています。

研究分野

ゲノム生物学、遺伝子治療学、腫瘍生物学

キーワード

バイオインフォマティクス、次世代シークエンス、新規治療分子

新しいがん治療法・評価法の開発を見据えた
遺伝子発現制御の仕組みの解明

ヒトはおよそ20,000個の遺伝子を持っています。この遺伝子を適切に使用することで、様々な形質を持った細胞が作られます。この遺伝子の使用法がおかしくなることで、がんを含む様々な疾患が生じます。転写を制御する因子は多くのタンパク質やRNA、DNAの間で複雑に相互作用し、様々な構造体を形成します。この構造体によって、標的遺伝子ごとに応じたクロマチン高次構造、転写量、スプライシングパターン、mRNA輸送量、翻訳量が精密に決定されます。このように遺伝子発現の制御時において、それぞれのタンパク質分子は均一な構造体を形成しているのみでなく、次々に形成・融合・解離することで、遺伝子発現を進行する酵素反応を精緻に制御します。しかし、これまでに細胞内で形成される一時期的な多因子間相互作用を時空間的に分解し、検出する方法は開発されていません。そこで、私達はこの時空間的な多因子間相互作用によって制御される遺伝子発現の仕組みを明らかにするために、主にDNAバーコードを用いた新規解析法を開発し、研究を進めています(図参照)。

これまでの研究において、データベーススクリーニングから同定した新規ヒストンメチル化酵素Whsc1が転写因子Nkx2-5と協調的に機能することを見出し、先天性心疾患を伴うWolf-Hirschhorn症候群の原因遺伝子であることを明らかにしました(Nature 2009、PLoS One 2014)。転写因子Nkx2-5がクロマチン構造を規定し、転写終結因子Xrn2と協調的に転写終結を行うことを見出しました(eLife 2016)。米国留学中には、クロマチン構造の急速な脱凝集機構を明らかにしました(Mol. Cell 2017)。癌における遺伝子発現制御機構の解明研究においては、腫瘍を増悪化する選択的RNAスプライシング制御機構の解明とその制御法開発を行いました(Cancer Res. 2019、Tetrahedron Letters 2019、ACS Medicinal Chemistry Letters 2020、Cell & Bioscience 2022)。DNAバーコードとCas9/self-target gRNAを組み合わせた遺伝子発現記録法を用いて、癌細胞集団中における癌幹細胞の出現機序を明らかにしました(Cellular and Molecular Life Sciences, 2022)。さらに、非増殖性ウイルス療法による抗腫瘍効果を誘導する遺伝発現制御機構の解明に取り組んでおり、その作用機序を基にした新規の抗がん剤開発を進めています。

 

研究方針と進行中の研究プロジェクト

 

論文

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